ラベル

2022年12月6日火曜日

日経平均銘柄の利回りの向上について

 2022年になり、日経平均銘柄の利回りが向上している。この背景には、コロナ禍を経て米国の金利上昇に伴う円安の進行と、ウクライナ情勢をめぐる物価高騰があると思われる。両者はもちろん結びついており、インフレの進行としてまとめてしまうこともできる。

例えば、このところ乱高下を繰り返すようになった海運株の場合、日本郵船や商船三井は16%近い利回りであり、普通ではない。あるいは日本で高配当としてよく知られるJTにおいても、7%近い水準に達している。

もちろん、全ての銘柄の利回りが上昇しているわけではなく、ある種の二極化の傾向を見ることはできる。株価そのものも上がってしまえば、利回りは減少することにもなる。こちらも高配当を保ってきた銀行株などの場合、三菱グループは4%台を維持し、NTTは3%台前半である。両者の株価は比較的上がってきているようにみえる。

厚切りジェイソンよろしく、これまでは海外の株を買った方が安定的であったのだが、2022年はむしろ国内の株を買った方が良かったということかもしれない。特に為替の影響を考えると、その傾向は強まるだろう。

この場合、例えばETFとしてありえるのは、NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信や50連動型上場投信であろう。70の方は4%、50の方は5%に達している。ちなみに、日経平均まるまるということだと、2%前後というところになる。配当生活を目指すという意味では悪くない。

気になるのは今後であろう。インフレの進行が終わるか、あるいは日経平均そのものの下落というリスクは考えられる。これらもしかし、結びついているようにみえる。2022年、日経平均はほぼ横ばいか、ゆるやかに下落した。インフレなどの進行がプラスには作用しなかったということであろうし、これは世界的な傾向でもある。とすれば、インフレが終われば、日経平均は上昇するということにもなる。さらにインフレが続くとしても、日経平均はしばらくこの感じということになるだろう。

2022年9月30日金曜日

レバナス投資?

 よくあるエピソードを記載した記事をつらつらみていると、「レバナス投資」なる言葉を見つけた。レバレッジ ・ナスダック・投資?だろうか。ハイリスク・ハイリターン投資とあり、ヤバい類のものであるようだ。


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58歳独身女性が青ざめた…老後の「資金不足」に絶望して始めた「ヤバい証券投資」

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記事の内容はまあありそうな感じはあり、第一に、保険の類で儲けようと思ってはいけない、ということが言える。こちらは「変額保険」なるものが紹介されている。詳細はわからないが、いくつかの商品を見た感じだと、保険料の一部をETF系の投資に回して運用するという形のようである。手数料は直接行うよりもやや高いと言った程度の印象だが、実際にはもう少し高くなるのであろうし、途中で解約すると割引される。別途ETFを買える人々にとっては無用の商品であり、よくわからないので保険会社に全部お任せしたいという人向けだといえる。

その限りにおいて、この記事でいうように、「20年前なら入ったらのにな・・・」と思いながら保険ではなく自分でネット証券を開設し、投資デビューしてみたというのは全く正しい。口座は無料で作ることができるし、投資についても手数料はかなり安い。練習がてら買ったり売ったりすることもできる。


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58歳女性が絶句した…「ハイリスクな投資」に手を出して招いた「破滅的な末路」

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とはいえレバナス投資である。後半の記事によると、レバナス投資とは、「レバレッジ型ナスダック連動型投資信託」のことらしい。ナスダックのETFにレバレッジをかけて2−3倍にして運用する。当然利回りや変動も大きくなる。同時に記事にもある通り、完全にETFそのものに連動するわけではなく、長期保有すると目減りすることが知られている。結果、コロナ禍ではナスダックそのものが大きく上がって下がるという状況にあったため、記事では1000万円が3分の1になってしまったとされる。

仮にレバレッジをかけていなかったとしても、2022年において、ナスダック100でよく知られるQQQの場合、400から300を割るまでに下げている。25%減少である。3倍で運用していれば、確かに3分の1になってもおかしくはない。

投資初心者は、長期的な資産形成にはレバナスではなくレバ「無し」を心がけて取り組んでほしいと結ばれている。たぶん、そうであろう。

保険において、20年前ならばと考えたことは悪くない。同様に、投資においても、20年ならばと思うことが必要である。20年前ならば、というよりも、これから20年後を想定する。そう考えれば、第一にレバナス投資は効果的ではない可能性が高い。少なくとも目減りするからである(実際どのぐらい目減りをするのかはネットで見る限りはよくわからず)。

長期を想定すれば、レバレッジ型ではなく、通常のETFとなるだろう。単にナスダックのQQQにしておけばいい(それでもリスクは高めだろうが)。逆に短期で儲けようとしたのならば、レバナスもありだろう。特定の銘柄一点買い(でかつレバレッジ )よりはリスクを分散できる。だがこの場合はギャンブルであり、最悪ゼロになっても仕方ないという余裕資金で考える必要がある。


2022年8月24日水曜日

厚切りジェイソンに学ぶ

特に気にしているわけではないが、最近、時々記事を見かける厚切りジェイソンである。基本的に違和感はない。少し確認しておこう。

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僕の生き方、耐えられない人も多いと思いますよ──コツコツ投資を15年、厚切りジェイソンの“ぜいたく”な暮らし

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現在36歳だという。GEに就職後15年かけてコツコツと投資を続け、いまでは資産運用だけで家族全員が一生暮らせる資産を築きあげている。30歳そここでFIREを成し遂げたとあるが、GEの給料の投資だけでそこまでの資産には至らないかもしれない。詳細はわからないが、ITベンチャー企業の取締役と芸人としての利益もある。

「僕のやっていることは、とっても簡単なこと。支出を減らして、全米インデックスファンドを買うだけ。」

現在の投資の基本はこれであろう。為替の問題はあるが、とりあえずの選択肢はこれしかない。さらにリスクを取りたくないのならば、全世界インデックスファンドを買えばばよい。利回りは下がるが、選択肢はどちらかである。例えば全米インデックスファンドとしてVTIを買っていれば、2001年からみて2020年までに取引値自体がおよそ3倍になっているとされる(56ドル->159ドル)。分配金の再投資を含めれば5倍にもなる(たぱぞうの米国株投資)。厚切りジェイソンの投資も5倍になったとすれば、たしかにそれなりの資産になっているだろう。

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米国市場にせよ世界市場にせよ、これほど成長することはしばらくはないのかもしれない。だがいずれもグラフを確認すれば、リーマンショック前からみてもかなり線形の右上がりであるようにもみえる。その意味では、引き続きどちらかに(あるいは両方に)投資するという選択肢は基本となる。

重要な点として、投資したままではその資金は生活に使うことはできない。その点では、厚切りジェイソンがいう「僕の生き方、耐えられない人も多いと思いますよ。全然苦だと感じていないんですけど。僕はお金を使わない」ことには留意する必要がある。投資している限り資産は増えるが、基本的にそれは消費に回せるわけではない。

もちろん、切り崩すことや、配当については消費に回すこともできるだろう。これらは有閑階級の基本的なやり方だと思われる。しかし一方で、例えば仮に1億円あったとして、現状においてVTIの利回りは2%を割り1%前半である。彼が父親から聞いたという宝くじで当たった1億円を投資すれば年間600万円の利益をもらうことができる(利回り6%)、状況ではなくなっている。現状、1億あっても、税金を引かれればいよいよ年間で100万円を割ってしまいかねない。

2つの点を再確認することができる。一つには取引値の上昇はキャピタルゲインの源泉であり、資産の増加という点で重要である。しかし、そのままでは消費には貢献しない。一方で配当はインカムゲインとしてその都度の消費に使うこともでき、実生活において重要である。しかし、現状では利回りは低下傾向にあり、事態はそう簡単にはいかない。厚切りジェイソンがいうように、お金を使わないことや、別途普通に働くことが必要になる。

「投資法自体は本当に地味な作業。期間が長くなると、軌道に乗る。」

それで儲かったり損することもあるが、基本的にはそういうものだろうという気はする。NISAのような仕組みが拡充されそうではあるが、事態は特に変わらない。

2022年8月13日土曜日

1億円からの運用選択肢

以前、「5000万と1億と5億を貯めることの違い」について書いた。この際のアイデアは、働き続ける必要があるのか、それとももはや有閑階級となるのかという区分を持ち込むことで、おおよその違いを説明できるであろうということであった。

関連しそうな面白い記事を見つけた。資産の増やし方と題して、1億から3億、3億から10億、10億から30億、30億から100億が区分されて説明されている。これらはそれぞれクラス1、3、10、30として分けられる。

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最後のクラス4となる30億から100億となると、会社の運営と売却が有効になるとされる。今回は、とりあえずここまで考える必要はないであろう。逆にまずはクラス1では、それまでからのマインドシフトが必要になる。この点は、前述の5000万円の頃の意識変化と同様であるように見える。資産の維持、運用へとシフトし、そのためには端的にはうまい投資が必要になる。クラス1(やそれ以下)が目指すべきは、収入を増やす(つまり働く)、支出を減らす、資産運用で増やすの3つであるという。

有閑階級を目指すという点では、クラス3やクラス10を参考にする必要があるだろう。実際、クラス3となると、それまでの資産運用とはもう少し異なる選択肢が必要になる。この辺りは他のサイトの説明でもしばしば登場するが、流動性の低い株式への投資、そしてレバレッジを使った投資である。特に前者は、一般的には投資はできないであろうから、ここにおいてプライベートバンクやプライベートエクイティの利用が必要となる。後者は信用取引のようなものも想定できるのかもしれない。この傾向はクラス10でも同じようである。

クラス3や10で新しい戦略が必要になるのは、平均的な市場の利回り(3-5%ぐらいだろうか)では3億を10億、10億を30億にすることは難しいからである。一方で、クラス1以前のように少額をギャンブルにかけるという感覚で投資するわけにもいかないため、別の仕組みに頼る必要が出てくる。

ネット投資家の人々は、感覚としてはレバレッジを使った投資に精通しているように見える。そうではない場合は、PEなどを上手く使うのだろうか。レバレッジの利用は、引き続きギャンブル的な性格を持つようにも見える(倍率次第ではあろう)。一方のPEは魅力だが、アプローチの仕方がよくわからないという課題はある。クラス1やその下から上がっていくという場合にはなおさらである。


2022年5月21日土曜日

アメリカ株式市場の下落とVTI

 先日厚切りジェイソンの話をしたが、ちょっと炎上気味という記事を見つけた。このところVTIの下落が著しいからだと言う。確かに、今年に入り、コロナはもとよりロシアの問題が大きくなり、そこにインフレ脱却が重なることで相場が難しくなっている。記事によれば、VTIは直近1ヶ月で12.6%も下げたという。ボラティリティは大きそうである。


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厚切りジェイソン、ツイート全消し 米国株下落で非難殺到か?
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 とはいえ一方で、コメント欄を見ればわかるように、VTIのようなETFは、もともと短期ではなく長期で利用することに意義がある。10%下げようが20%下げようが、積み立てていくと言うアイデア以外に選択肢はない。それが嫌ならば、もっと短期の商材を購入した方が良いだろう。

 このあたりは、実はラップ口座や投資信託の方に利(意図せざる)があるのかもしれない。こちらは、始めてしまうとやめたり売ったりすることが存外難しいからである。株式のように当日売買できてしまうETFは、一方で下がった時に売りたくなってしまう。これに対して、ラップ口座などは、たぶん解約に手続きやタイムラグがあるため、とりあえず放っておこうかということになる。場合によっては忘れてしまうこともできる。うまく運用できているのならば、中期、長期で取り戻すことができるだろう。

 VTIの目下の問題は、下がっているということではなく、下がっているにもかかわらず買いにくいということにあるように思われる。円安が進みすぎているからである。少し前の100-110円のレンジからみれば、今は1.2倍以上になっている。この相場が常態化していくのか、さらには円安が進むのかはよくわからない。過去30年から50年のレンジ幅でみても、最大は140円ぐらいであり、現状はかなり上限に達しているからである。

 VTIが10%下がっても、円が10%上がっているのならば状況はあまりかわらない。ただし、配当金は円に変わって戻ってくるため(たぶん)、既に持っているVTIについては、円安の方が有利である。VTIの利回りは、ウェブで検索すると直近だと1.26%らしい。ちょっと低すぎる気がするが?、円安になれば、この実質的な円換算の配当は増えることになる。

 何にせよ長期で。そしてここでいう長期とは、別に10年、20年を想定するわけではなく、せいぜい数年といった単位でも構わないと思う。

2022年5月3日火曜日

ラップ口座とかAIとか、メリットあるのかな

最近になってまた数が増えているものに、ラップ口座がある。なぜこれが繰り返しやってくるのかよくわからないが、今度は「ゴールベース」なるアイデアと結びついているという。

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必要なのは“投資”ではなく資産運用-見直されるラップ口座の今
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ラップ口座とは、ようするにお任せ口座であり、放っておけばあとは委託先がうまくやってくれる仕組みである。このさい、上の記事によれば、以前は「販売手数料が収益源」だったため、とにかく次々に買ってみたらどうですかという運用方法になっていたという(本当かどうかは知らない)。これに対して、ゴールベースなるアイデアのもとでは、「預り資産残高の2%など、売買頻度によらず費用が発生する仕組み」になる(らしい)。

預かり資産の数%をとるのは一般的であったように思うが、何か変わったのかもしれない。というか、2%は高い気がする。勝負しているアクティブファンドという感じである。実際にはもっと低い%であろうが、それにしても、ラップ口座を開いてはダメなのではという感じしかない。

投資信託にせよETFにせよ、預かり資産の数%がとられる。その中でのリバランス運用が行われるからである。しかし、今は1%以下が普通であろうし、グローバルなETFについて言えば、0.1%を割り込む場合すらある。そのぐらいの手数料でいいはずであり、それ以上とるというのであれば、一体どこまで勝負しようとしているのかということになる。

ところが、上記の記事では、新しいラップ口座の成否は「顧客側が「もうかる商品」を望むことから脱却できるかどうかにかかっている」とされている。もうからない商品で、運用の手数料を2%(あるいは半分の1%でもいいが)もとるというのは、一体どういう狙いなのだろうか。そもそも、ラップ口座を選択する人々は、もうかる商品を望んではないだろう。むしろ、手軽に簡単に安全に、その範囲で利益を得たい人々なのではないだろうか。儲けたい人は直接株を買ったり、アクティブファンドにのるはずである。

改めて確認してみると、話は変わって、これとは別にロボアドバイザーの記事を見つけた。こちらも最近よくみるもので、AIといろいろ連携するとされる。ラップ口座とAIが合体しているようなものもある(だから検索できたのだが)。ただ実際のところ、ここでいうAIというものがどういうものなのかはよくわからないことが多い。機械学習ですらなかったりもする。

こちらも運用の手数料をとり、1%を超えるものもあるようだ。高い感じしかしないが、上の記事だとマネックスと投信工房(松井証券か)は1%を大きく割っていて安めである。何をしてくれるのかちょっと気になる。無料診断をしてみたが、投信をいろいろ買ってポートフォリオを組んでくれるというようである。標準で、年5%ぐらいの利回りを想定しているように見える。組み合わせる数が多く、なんとなくポートフォリオになっているようにみえるが、少し数を減らせば自分でもできる。

というか、ETF系は、最初からポートフォリオになっているわけで、それをたくさん買う必要もない気がする。リスクもリターンもだいたいみえており、年5%自体も可能である。厚切りジェイソンに従えば、「VTIへの投資は、どのタイミングでスタートしても、20年の長期スパンで見れば年利6.4%を下回ったことがない」らしい。たぶん、そのとおりである。ラップ口座やAIに任せるよりは、彼を信じた方がいいような気がする。

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2022年2月15日火曜日

今は「市場全体を買う式」は至難か?

コロナ禍を経たテーパリングが始まりつつある今日この頃。株価の乱高下に合わせて、興味深い記事を見つけたので少しメモしておく。

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心では一刻も早くインフレの息の根を止める必要があると思っているけれど市場が荒れているので強いメッセージを出せないFRB
SBI証券、2022/1/28
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アメリカではインフレが実際に進んでいるとして、FOMCが利上げとバランスシートの圧縮を始めようとしているというわけである。この対策を警戒する市場は、このところ株価の乱高下が続いており、直近はかなりの下落傾向にある。そして逆に、この市場の乱高下をみるにつけ、FOMCやFRBは強い対応を打ち出せなくなってしまっている。板挟みになっている状態であろうか。

現実としてそのような認識は多くの記事で見かけるとして、興味深いのは最後のオチである。

「いまは「市場全体を買う!」式の、怠惰なアプローチで投資しても儲けることは至難の業です。」

いうまでもなく、「市場全体を買う!」式とは、インデックス投資を示しているだろう。今は、インデックス投資ではダメだという。なぜならば、上記に見たような状況だからである。

本来、インデックス投資は、市場環境が不確実で株価はランダムウォークであるがゆえに、結果的に有効になるのであった。インデックス投資が有効にならない条件は、したがってその逆、未来が見える時である。利上げが進むことが確実であるとわかっているため、これに対して手を打っても良いということになる。

現状を不確実で不安定と見るのか、それとも確実で安定的と見るのか。正直最初の説明としては前者のように見えるが、この記事では、後者で見ていたということになる。それは多分にポジショントークともいえるが、見えている人には見えているというかもしれない。もっと言えば、この場合、去年の状況やさらにコロナ前の状況では、どのようにいうことが出来たのだろう。



2022年1月31日月曜日

トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンゴ「となりの億万長者 新版」1996、早川書房。


トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンゴ「となりの億万長者 新版」1996、早川書房

随分と前の本だが、今読んでも面白い。2013年に新版として日本語訳になっている。当時のアメリカ人の億万長者たちを調査した結果をまとめた書籍である。

タイトルが示唆するように、私たちの周りにも億万長者(100万ドル以上、大体1億円以上の純資産を持つ人々)はいるものだということを主張している。当時のアメリカで全体のわずか3.5%だが、逆に言えば、100世帯に3世帯は億万長者である。

日本でも、野村総研のよく知られた調査で言えば、1億円以上の純資産で富裕層とされ、2019年のデータでは超富裕層も含め約132.7万世帯ある。5000万世帯を全体と考えれば、2.6%程度である。アメリカよりも低いが、それでも100世帯に2世帯以上は億万長者となる。

ようするに、億万長者は周りにいそうだが、私たちは気付いていない。なぜか。それが億万長者の特徴であり、億万長者になるための条件でもある。多くの億万長者は、「普通の人々」なのである。

私たちがイメージする億万長者は、いい家に住み、いい車を待ち、いい服を着て、いい食べ物を食べている。だが、こういう人々は、総じて所得は多いものの、貯蓄は少なく、本書が言う億万長者ではない。理由は簡単である。支出が多すぎて、貯蓄に回らないのである。一方で、億万長者は、普通の家に住み、普通の車に乗り、普通の服を着ている。そして、所得が少しある。彼らは従って「普通の人々」であり、他の人と区別がつかないが、実は億万長者になるというわけである。

ここから、億万長者に私たちもなれることが示される。浪費しないこと。倹約、倹約、倹約し、貯蓄すること。あるいは貯蓄を賢く投資運用すること。それだけである。

興味深いことに、所得が多い人々は、高学歴で、社会的ステータスが高い人々が多い。彼らは、周囲の生活に合わせ、支出がどうしても多くなる。結果として、貯蓄は増えず、億万長者にはなりにくい。その時に良い生活ができれば十分だというかもしれないが、彼らは競合的消費にハマっているとも言えるし、税制などの環境的要因、さらには子供も浪費癖が付きやすく将来の不安を抱えやすいとされる。倹約し、億万長者を目指した方が結果的に幸せになるのではないかというわけである。

日本でも、この本を参考に「となりの億り人」が書かれている。こちらもとても興味深い。基本的な主張は同じで、より投資運用にフォーカスされている。日本でも、倹約し、貯蓄し、運用することが、億万長者への道ということだろう。




2022年1月19日水曜日

5000万と1億と5億を貯めることの違い

1億円という言葉はとてもキリがよく、目標になりやすい。1億円貯めよう、であるとか、1億円あれば、というわけである。同時に実際には、1億円が万能というわけではないので、1億円あっても実は、といった話にもなりやすい。この「1億円」は、実質的には、いったいどういう意味を持つのだろうか。

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1億円を貯め始める、一番いい方法
(貯まる方法ではないのかもしれない)

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例えば、お金持ちの基準といえば、野村総研による図表がよく使われている。この分類でいえば、真にお金持ちと言えるのは純金融資産が5億円以上であり、1億から5億は同じ分類で富裕層に位置づけられる。ちなみにその下は準富裕層であり、5000万から1億となっている。この基準から言えば、5000万、1億、それから5億でお金持ちの程度が分かれるといえるのかもしれない。1億円の意味を知る上では、5000万円と5億円についても検討した方が良さそうである。だがそれぞれの区分について、なぜその金額で分類されるのかについてはあまり示されていない。

野村総合研究所

5000万円が一つの区分となるのは、確かのようである。「お金持ちの教科書」によれば、5000万円ぐらい貯まってくると、人の意識が変わってくるとされる。すなわち、それまではお金を増やすことに意識が向いているが、5000万円ぐらい貯まると、今度はそのお金を減らさないことに意識が向くようになるという。配当生活への志向が芽生え始めるのである。「お金持ちの教科書」では、この意識の変化をお金持ちへの変化として捉えている。準富裕層がアッパーマスと区別される5000万円には、そんな意味があるということになる。


では5000万が1億になったとき、何か変わることはあるのだろうか。5000万円の減らさないことへの意識の変化とは、先に述べたように、配当生活への意識が増すということである。ベンチャーに投資して0か10倍かではなく、リスクを減らし、この資産を元にずっと3%程度の配当を得るためにはどうしたらいいのかということに意識が向かう。

この意識は、おそらく1億になっても変わらない。というよりも、5000万円で現実的に配当生活というわけにはいかないであろうから、1億、2億と原資を積み増していくことになるだろう。このとき、1億あっても、2億あっても、多分配当生活としては安定ではない。最低限の生活は可能かもしれないが、おそらくこの時に想定されているのは、副収入である。5000万円があり、金利3%だとすれば、年間150万円である。1億円ならば、300万円になる。通常の収入がある程度あっても、結構なお小遣いとなるだろう。この配当を安全に積み増していくという過程にある人々が、1−5億円の富裕層であるようにみえる。

つまり1億円とは、5000万円ぐらいから始まる配当生活への意識の成長期である。5000万のころに初めて芽生えるその意識は、1億円を越える頃から本格的になっていく。貯めていけば、完全なる配当生活が見込めるかもしれないからである。だが一方で、依然として完全なる配当生活は容易ではない。別途本業を持ちながら努力することになるだろう。この時期が1億円の頃に始まる。

とすれば、次に興味があるのは、5億の壁である。1−5億円と、5億円以上をわけるものは何かあるのだろうか。もちろん、5億以上という場合には、下限というよりは、そこから果てしなく上に上がっていくであろうすごいお金持ちが考慮されている。しかしながらここで考えてみたいのは、そういうすごいお金持ちも含めて、分岐点としての5億にどのような意味があるのかということである。先程の配当という点からみれば、5億円で3%金利ならば、1500万円となる。これは通常所得としてみても高額だといえるだろう。このぐらいになれば、配当生活とはっきりといえそうだ。4−5億円程度になれば、実際の配当生活が可能になるといえる。

富裕の意味が有閑階級のことであるとすれば、それはやはり、5億円以上ということになるのだろう。1億や2億はその通過点であり、働かねばならない(無理に働く必要はないにしても)という点においては、一般の労働者と変わらない。配当利回りがもっとあるということならば別だが(例えば利回り5%で安定しているのならば、3億あれば十分ということかもしれない)、それでも5000万円からはある程度の上積みは必要だろう。この期間が、1−5億円で区分された富裕層である。

5000万円や1億円は、したがって多くの人にとって目指すことができる目標であるともいえる。書籍やネット上でも、この金額は目標と往々にして目標となりうる。それは労働によって実現可能だからであり、その後も労働を続ける必要があるという意味において、地続きである。一方で、5億円(実際にはもう少し低いのかもしれないが)のハードルは高い。労働によって実現できるようにはあまりみえず、したがって、乗り越えようとすれば何かしら別の形の投資が必要である。いわゆる億り人系の記事をみていると、この手の傾向が強い。それは1−5億に収まる労働を伴う富裕層ではなく、最初から不労所得を狙うような富裕層である。

1億円を目指す。そして5000万円を超えた頃から、5億円以上の超富裕層が実現しているであろう配当生活が見えてくる。だがその実現は容易ではなく、あくまで副業の位置づけが続く。そのまま副業のままであれば、1億円の時代が続くということになるのであろう。逆に、本当に5億円を超えてくれば、次の段階が見えてくるということになる。