ラベル

2013年1月31日木曜日

やさしいベイトソン

やさしいベイトソン―コミュニケーション理論を学ぼう!
野村直樹『やさしいベイトソン―コミュニケーション理論を学ぼう!』金剛出版、2008

前回に引き続きベイトソンを学ぶ。備忘録がてら。
こちらはベイトソンといえばというテーマ、ダブルバインドを中心に取り扱っている。「自主性を発揮せよ」という言葉のダブルバインド性は、病気の原因にもなれば、新しい可能性を切り開く転換点でもある。禅の問答に共通するというが、大事なところだろう。

サイバネティクスのフィードバックについても言及がある。てっきり機械的な話から議論が始まったのかと思っていたが、ベイトソンの場合、その仕組みをバリの文化人類学的調査などからひっぱりだしていったようだ。人間関係が加熱しクライマックスに近づくことを避けるメカニズムがある。なるほど。

なんにせよ、ベイトソンに少しだけ詳しくなった感はある。奥さんがミードだということも初めて知った。


ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛 (光文社新書) 童話・昔話におけるダブル・バインド―思惟様式の東西比較 環境教育という「壁」―社会変革と再生産のダブルバインドを超えて

2013年1月17日木曜日

ふしぎなキリスト教

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)』、2012

  日本などの近代化した社会は、政治形態は主権国家で民主主義、経済は市場経済、そして文化面では科学技術が発達している。ところで、そのいずれもがキリスト教の考えをベースにして発展した、ということは、普通余り考えないだろう。そもそも、国家や民主主義や市場や科学が宗教と深く関係するとは、ちょっと思いつかないのではないか。又、それらが他の宗教、例えばイスラム教など一神教や、仏教や儒教などから生まれずに他ならぬキリスト教から生まれたのか、それもふしぎなところだ。この本においては、まさにそのことが全体を通じて説明されている。

 最初に著者は、世界中の近代化した社会でキリスト教に関する理解度を調べると、日本人が最下位だろう、といったことを述べている。そのため、初心者向けの入門書としての配慮や工夫があるが、一方で核心に迫る本質的な問題を扱っており、内容としてかなり高度だと思う。新書にこれだけの内容を盛り込めたのは、素晴らしいと感じる。又、キリスト教を単独に取り上げるのでなく、他の宗教と比較して説明している点が特色であり、タイトルとなっているキリスト教のふしぎさをうまく捉えている。

 さて、キリスト教について核心に迫る本質的な問題は、この本では「一神教を理解する」、「イエス・キリストとは何か」、「いかに西洋をつくったか」と三つに大きく分けられている。その三つに合わせて内容は三部構成になっており、それぞれ更に具体的な問題が合計50以上設定されている。各問題について、豊かな知識を背景に丁寧に説明されるので、キリスト教事項事典としても使える利便性があると思った。

 説明を通じて、なるほどと得心した点はいくつもある。中でも重要だと思ったのは、一神教と多神教をそのまま比較するのでなく、一神教・儒教・仏教と多神教との間に大きな区切りを置く見方だ。歴史的に多神教は、初期の農耕社会や狩猟採集社会に現れている。その後、多くの場所では異民族の侵入や戦争など大変化が起こり、それまでの社会や自然が壊れてしまったという。その破壊の中で、人間らしく連帯して生きるための戦略として、一神教や儒教・仏教が生まれたのだと。これらの宗教には共通点があり、いずれも手近な神々を否定している。そして、これらの宗教がその後世界標準となった。一方で日本では、多神教が、そのままに残った。多分、恵まれていたのだろう。日本人が、キリスト教に関して理解度が低いという理由は、そのことが深く関係しているのだろう。

 明治の文明開化の時には、西洋文明を形ばかり借用したと思う。以来、もう150年近く経つ。又、その間には太平洋戦争の大敗北もあり、日本人も悲惨な目にあって戦後日本を作り上げてきた。しかし、戦後日本を形成する日本国憲法、民主主義、市場経済、科学技術、文化芸術が、今もまだどこかしっくりこないのは、今でもやはり形ばかりの受容という態度が変わっていないからではないか。

 この本は、私たちの生活から一見余りに遠いキリスト教の核心を、的確に紹介してくれる。そして、それらを理解すると、実は身近な日本の諸制度の意味が明快になってくるから面白い。主権や人権と神の関係、予定説と資本主義の精神、神の見えざる手と市場経済、そして理性や科学と信仰の関係、宗教画や宗教音楽など、それらの繋がりを手掛かりに考えると、今の日本や日本人、そして自分自身についての理解も深まるように思う。


やっぱりふしぎなキリスト教 (大澤真幸THINKING O) この一冊で世界の「四大宗教」がわかる!: 社会常識として知っておきたい仏教・キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教 (知的生きかた文庫) 世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)

2013年1月15日火曜日

3031 - 9mm Parabellum Bullet

最近聴いていた曲で印象深いのは、9mmの3031という曲だった。どういう理由で買ったのか全く覚えていないのだが、聞いているうちになんだこれは・・・と思ったのだった。

実際、ヘッドフォンで聞いているだけでは歌詞がうまく聞き取れない。・・・の夢を見る、とかなんとかいっているの聞き取ろうとしているうちに、ネットで検索した方がはやいと思い始めた。答えはタイトルの通り、「3031回は見たあの夢を見る」というわけだった。ここで、ますますなんだこれは・・・と思ったのだった。


「3031」 歌詞タイム


意味を調べようと思ったのだが、それ以上はよく分らなかった。数字自体は、誰かの携帯電話の下4桁という話もあるらしいから、まあそんなに意味があるわけではないのだろう。にしても、最後に「わかるだろう?」と繰り返されて、??うむむ、わからないなぁと思う。

歌詞と曲をみていただけでは、結局音楽はわからない。実際に歌っているその行為とともに理解せねばならない。と、『意味への抗い』に書いてあったから、とりあえず今度はyou tubeで映像を探してみる。さすがはネット時代こちらも見つかった(2013.1.16時点は存在した)。



要するにライブの曲なのだとわかる。であれば、「わかるだろう?」の問いに答えることは簡単だ。よくわかる。わかるだろう?

何度か聞いているとギターがかっこいいなぁと思えてきた。

Revolutionaryバンドスコア 9mm Parabellum Bullet/Revolutionary (BAND SCORE)“意味”への抗い―メディエーションの文化政治学

2013年1月5日土曜日

みんなのベイトソン

みんなのベイトソン
野村直樹『みんなのベイトソン』金剛出版、2012

グレゴリー・ベイトソンの解説本だが、こった作りになった本である。会話風による解説は時々見かけるが、その解説をさらにサスペンス小説が挟み込んでいる。こうした構成そのものがベイトソンが示そうとした学習ということなのかもしれないし、禅の話も重要には違いないが、一方で読みにくいともいえる。

会話風の解説はわかりやすいところで、ベイトソンによる学習の論理について、試行錯誤が生じないルーチン化された学習0、特定の問題について試行錯誤で学んでいく学習Ⅰ、特定の問題の相対化までを試行錯誤で学んでいく学習Ⅱ、そして、自己を変更することまでを含み、もはや一言では説明できない状態として学習Ⅲが提示される。

大事なのは学習ⅡとⅢということになるだろうが、とにかくⅢが直接的には理解しにくい。自分が変わることであったり、学んだ内容について、自ら修正を施せるようになるようなこというようではある。理論を学んだ際、やがて、自らがその理論の体現者として、その理論を新たに作り直していくような学習であろうか。

学習Ⅲは、関係性にも関わるという。もともと、ベイトソンは学習をコミュニケーションとして捉えていたらしい。コミュニケーションは、基本的に相手を必要にすることになるから、ここでの学習とは、個が知識を得るというプロセスではなく、関係性の変化として理解されることになる。

この本を読んでちょっとベイトソンに気になったので、もう少し読んでみようと思う。このあたりから学習ⅡやⅢが始まるということなのかなとも思う。あるいは、読んだだけでは駄目で、もう一歩、コミュニケーションが始まるところまで進める必要があるということなのかもしれない。

やさしいベイトソン―コミュニケーション理論を学ぼう! 精神の生態学 精神と自然―生きた世界の認識論