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2021年12月13日月曜日

不動産投資とREITならREIT

金融商品の一つにREITがある。不動産投資を商品化して、通常の株と同じ感覚で売買できるようにするものである。詳細は、例えばJAPAN-REITに詳しく、数えられる程度の投資法人が存在していることがわかる。多くの株が数百円から数千円程度であることに対して、REITは一株数十万と高いようにも感じるが、多くの株は100株単位であるのに対し、REITは1株から買えるので、実質的には同じぐらいの価格である。

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JAPAN-REIT

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不動産投資というと、一般的には、アパートの一室を買って賃貸に出すような、いわゆるアパート経営やマンション経営が想定される。中には不動産王のような人もいて、不労所得で稼ぐ方法といった本もたくさん出回っている。個別には取り上げないが、Amazonで検索すれば以下の通り。。。バブルの頃ならば、転売で利益を得るようなものが不動産投資だったかもしれないが、現状では利回りを考えるのが普通であろう。

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amazonで不動産投資検索

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そうなると、不動産投資で直接アパートを買うか(そして賃貸で稼ぐか)、それとも、株式市場でREITを買うか(そして配当をもらうか)という選択肢が生まれるように思われる。利回りだけでみれば、多分どちらも同じ程度で、3-6%程度ある。ただし、不動産投資の方は、いろいろと手を入れたり損益通算などの余地があるから、うまくやれば10-15%といった可能性もある。逆に、REITは株と同じなので流動性は高く、さらに、大規模ビルへの分散投資となるため安定性はかなり高い。借り手が見つからずに賃貸収入が入らないような問題は、アパート経営の方が生じやすいだろう。

いろいろ自分でやれると思う人は不動産投資で直接、そんなにうまくいかないだろうと思う人は、REITを買っておくのが良いだろう。当然、REITは株と同じように毎日売買できるので、購入は容易である。一方でアパートを買うという場合には、結構な手間が必要になる。このあたりも手間をかけてもいい人は不動産投資、面倒な人はREITでお手軽にということになる。

もう一点重要な点として、不動産投資の場合はローンが組めるという点は考慮する必要がある。つまり、不動産投資の場合は、手元にお金がなくても、ローンでアパート一室を購入し、その家賃収入をローン返済に当てていくことができる。ローンを組んでREITを買う人はいないとは言えないが、あまり現実的ではない。

そう考えると、不動産投資は、手元資金がないが投資をしたい、よりリスクを取りたい人向けだということがわかる。逆に、REITは、手元資本があって、リスクをとりたくない人向けである。期待されるリターンは基本的には変わらない。

ところで、REITの適正価格はどのように考えたら良いだろうか。コロナ禍においてREITは上昇傾向にあり、逆に利回りは下がっている。利回りが大事という点では、買い時とは言えないようにも見える。同時に、株式でいうところのPBRは、REITではNAVと呼ばれる。資産となるビルの総額に対する現在の株の総額の割合である。1であれば、資産と株の価格が同じということになり、ちょうど適正ということであろう。1を切れば割安、1を超えれば割高とされる。2021年時点では、高いものは1.7近くになっている。

買い時ではないようにも見えるが、NAVは高い方が良いという見方もあるようだ。理由は、増資をしやすいということによる。REITは、通常の株とは異なり、利益はほぼすべて配当に回す必要がある。このため、新たな利益を増やすためには、ビルを買うための資金を新たに募るしかない。この時、株価が高ければ、少ない新規株式発行で十分な資金を得ることができ、水増し感が減る。

昔はこの議論はあまりなかったように感じるので、だんだんと意識されるようになってきているということかもしれない。いずれにせよ、アパートを買おうと考えたときには(多分こちらの方が、誰でも思いつきやすい)、REITについても考えておくのが良い。


2021年8月5日木曜日

複利を考えるメリットは現状はあまりない

 しばしば投資の議論で登場するキーワードに、「複利」がある。配当も投資に回してしまうことで、次の配当を大きくしていくことができるというわけである。ちょうど記事が出ていたので、思い出した(この記事そのものは、ドイツでは年利12%が普通ということで?複利の話はほとんどない。ウォルマートの株を買っていれば大儲けできたのが複利の力だというが、それは複利の力ではなく、たんにウォルマートの力である)。

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「富裕層の一般常識」資産1億円を達成するサラリーマン投資家が必ず守っている鉄則
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確かに、複利は時間をかければ大きな力となっていく。こちらのサイトで計算できるようなので、簡単に計算してみよう。

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知るぽると
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毎月1万円投資、20年、単利と複利(利息は各税金が引かれた後再投資)
金利10%の場合、4,320,706 円 5,710,618 円

20年間で140万円近い差がでることがわかる。しかもこの分析は税金がどちらも引かれているが、再投資がファンド内で行われる場合には税金がかからないこともある。そうなればさらに上乗せが大きくなることが期待される。先のドイツでは12%だというから、複利の効果はもっと大きい。

だが重要なポイントは、金利がいくらかにある。同じ条件で、金利を半分の5%にするとどうなるか。

毎月1万円投資、20年、単利と複利(利息は各税金が引かれた後再投資)
金利5%の場合、3,360,321 円 3,644,904 円

30万弱にまで差が縮まった。複利の方が大きくなることは当然なのだが、20年間で30万円を手にするために、ずっと再投資し続ける価値はどのくらいあるだろうか。

再投資するということは、その分リスクを負うということである。単利の場合、利息は元金に組み込まれず、都度自由に使える形になる。20年間で240万円がもともとの掛け金となるから、単利であれば90万円程度は、投資せずに他に使えるお金となっていたことになる。使い道がないのならば、もちろん複利がよい。だがそうでないのならば、何がなんでも我慢して複利にすべきであるというほどのことはないように思われる。

繰り返していえば、複利のポイントは、金利がいくらかにある。それからより正確には、あと重要な点として、金額と期間がどの程度かが重要である。とはいえ一般的に、金額が大きい場合には単利か複利かなど気にしない富裕層となろう。期間は孫の時代までを考えるのでなければ、20−30年といったところだろう。このぐらいの条件で、現状の金利を考えるのならば(最初のドイツの金利とやらでないのならば)、複利複利言うほどのメリットはないのである。都度使ってしまった方がいくらか幸せである。

最後にもっとありそうな金利として、3%だったらどうだろう。ETFならばこれでもかなりいい方である。

毎月1万円投資、20年、単利と複利(利息は各税金が引かれた後再投資)
金利3%の場合、2,976,231 円 3,071,158 円

差は10万円弱となった。個人的には、途中で50万円を手元に残せる単利の方が魅力的であるようにさえ見える。複利を推す声は、とにかく投資して欲しい投資会社の戦略であるようにもみえる。







2021年4月19日月曜日

安冨歩「満洲暴走 隠された構造」2015、角川新書。


安冨歩「満洲暴走 隠された構造」2015、角川新書。

この本には、いくつもの大きな特色がある。まとめると、以下のようだ。 

1 著者は、あとがきの中で、この本の執筆意図について書いている。自身が四半世紀かけて作り出した構想を、現時点で厳密に描き出すためには準備不足であり、更に四半世紀はかかりそうだ。しかし更に四半世紀が経てば、その時点で心配の対象である日本が、どうなっているかも分からない。なので、現時点での構想をラフスケッチすることにしたと。今の時点では、未だ不十分だがともあれ書いて、読者からの批判を得たいと言うのだ。  この本の出版後、著者の本が次々と精力的に書かれていることを踏まえると、ラフスケッチのお陰で、研究が更に展開しているのかもしれない。 

2 ものの考え方として、線形思考ではなく、フィードバックを前提とした非線形思考を意図的に用いている。このことは、まえがきに書かれている。社会的な事柄は、すべて相互に関連して影響し合い、更にすべてが動き続けているので、直線的な因果関係ではとても説明出来ない。ここで、フィードバックの考えが示される。「暴走」という現象は、フィードバックにより生じる、出来事間のループと関係がある。その例として、マルサスの幾何級数的な人口爆発や、最近のスマホと携帯とのあっという間の交代が挙げられている。ループが廻り始めると、極めて短期間に世界が変わるのだ。タイトルにある「隠された構造」とは、こうした出来事間に新たに見出された、ループの構造を指す。 

3 満洲や満洲国という、現時点では余り話題にはなりにくいテーマを、研究対象としている。日本は、日露戦争後に、満洲と深い関わりを持った。南満州鉄道、張作霖爆殺事件、満洲事変、満洲国の成立、満洲産業開発5カ年計画、満蒙開拓団、そして1945年の敗戦。この間の経済的、政治的、社会的な出来事が、データや資料を用いた研究により辿られている。著者は、満洲研究を、大学院生の頃から続けてこられたようだ。満洲が、どのように大豆の世界的な輸出地となったか。日本陸軍は、なぜ満洲事変を起こして満洲国を作ったのか。なぜ、更に華北に侵入して泥沼の日中戦争にと暴走をしたのか。ソ連の満洲侵入後の満蒙開拓団の人たちの悲劇は、どのように起きたのか。この辺りは、長い満洲研究を踏まえて、極めて説得力のある議論が提示されていると思う。まさに、様々な出来事がループとなって、暴走は止められなくなる。 

 そして終章では、「私たちは今、満洲国に住んでいる」として、満洲国と現在の日本の、共通点が挙げられている。満洲国の研究が、現代日本の現状への、警鐘と繋がっていくのだ。 

 以上この本の特色を三つに纏めてみたが、私には著者が人物を大きく取り上げていることが、とても印象に残った。上の2の、フィードバックに基づくループの中に、一つの要素としてキーパーソンを取り上げているのだろう。石原莞爾という人物が、満洲事変の勃発やその後の展開に大きく関わったことは、よく知られている。著者は、石原の総力戦についての理解が、連鎖する出来事の中で大きな役割を果たしたとする。石原は、日本には総力戦は無理だからまずは満洲を支配して国力を強め、アメリカとの最終戦争に備えようと主張した。そして、満洲事変における彼の成功が、軍部の暴走への道を切り開く。石原はその後、軍部の暴走を止めようとしたが、はじき飛ばされて退役させられた。キーパーソンとしては、高崎達之助に関する説明も、力が入っている。高崎は、1945年8月のソ連軍侵入後の満洲に残って、以後日本人会会長として、日本人の帰還交渉に奔走した。彼の活躍が、10万人から20万人の日本人の命を救った、と著者は書いている。後に中国の周恩来が、高崎の満洲での活躍をよく知っていると言い、高崎が亡くなったときには「このような人物は二度と現れまい」と嘆いたそうだ。

 社会的な事象の説明に、非線形的な考えを用いるとして、そこにリーダーたる個人を位置付けることは重要だと思う。仮にそのリーダーに、表面上は見えないループの様相が見えていたら、もしかすると暴走を止めることも可能かもしれないだろう。著者が、未だ不十分なラフスケッチだとしても、ここで一旦考えを提示したいとした訳が、分かるような気がする。ラフスケッチそのものが、一つの要素となってフィードバックを引き起こす。それが人物も含めた他の要素とどう関わり、事態をどう展開させるのかは、今後も気になるところだ。

2021年2月10日水曜日

アンドリュー・W・ロー「適応的市場仮説」2020年、東洋経済新報社。



 2020年のコロナ禍においてタイミングよく日本語訳されていた。表題の通り、本書では、適応的市場仮説が従来的な効率的市場仮説に対して提示される。このところ書いていた通り、インデックス系の投資の問題や課題が気になっていたところなので(「COVID-19が作り出すアクティブ投資の芽?」)、これに変わる新しいアイデアや論理があるのかもしれないととても期待して読んだ。が、ざっと見た限りでは、それほど新しい何かが提示されているとは感じなかった。心理学や神経科学やいろいろな他学問の知見が取り込まれているというが、株式市場を考える論理としては、あまり新しいようには思えない。

 彼自身の研究の成果として、効率的市場仮説がいつでも十全に働いているわけではないという可能性はありそうである。もし、効率的市場仮説を(ことのほか)強く、全面的に信じている人々がいるとすれば、反証としての価値がある。例えば初期の研究と思われるLo and MacKinlay(1988)では、ランダム・ウォークの想定とは異なり、2週間で測ったリターンの分散は、1週間で測ったリターンの分散の3倍になったことが示される(2倍にはならなかった)。また、今日の株式のリターンと明日の株式のリターンの自己相関を調べた分析では、相関が見られない時期、つまりは予測が不可能でありランダム・ウォークが成立していると言える時期と、そうとは言えない時期があったことが示されている。

 とはいえ、こうした結果が示すのは、株価は時々は(あるいはもしかするとかなりの期間は)予想可能になる(ように見える)ということであり、日常的にはむしろ自然であるように思われる。その理由は、他の学問を援用して、難しく言わなくてもいい。「適応的市場仮説は、価格に入手可能な情報がすべて自動的に反映されるわけではないとの見地に立つ(323)。」「適応的市場仮説に従えば、金融環境や市場の人口の動向次第では、投資家がしばらくの間、持続的なリスク・プレミアムを享受することも不可能ではない(387)。」現実を見ても、その通りであろうとしか言いようがない。研究として挑戦すべきなのは、むしろ常識に反するような完全な効率的市場仮説ではないかとも感じてしまう。

 個人的に、ランダム・ウォークの基本的なアイデアは、それが経済学的な理論基盤とどの程度対応するのかは別にすれば、未来はほとんど予測不可能なのだから細々動くのではなく、ただ世界は長期でみれば成長していくということを信じるだけで良いということだと考えている。ここから、だからインデックスへの投資こそが最適であり、それ以外の選択肢よりも期待利益も必ず高い、とまでいう必要はあまり感じない。個々時々において、それ以外の選択肢の方がうまくいくということもあると思う。現在の状況も、その側面がある。

 いくつか興味深いと思った点の一つは、リスク・プレミアムが得られる理由として、投資家が新規参入を続けている場合が挙げられていたことである。ネットの進展とグローバル化は、投資家の数を確実に増やしている。彼らは先日のゲームストップのような大きなうねりともなりうるが、基本的には、リスク・プレミアムの基盤となっているようにも思われる。コロナ禍も同じであろう。とすれば、冒頭の話に戻り、しばらくの間はアクティブ投資が有効になっていると見てもいいのかもしれない。ただもちろん、この流れに乗ることは、自身をジョージ・ソロスと同じような能力の持ち主であると考えることにもつながってしまうだろう。

 ざっと書評記事をネットで見た限り、上で述べた以上の中身に対する評価がわかるものはほとんどなかった。

「適応的市場仮説」コロナ禍で読むべき理由 マーケットを理解するための「進化生物学」

あらすじ、特に歴史的経緯の箇所を中心にまとめられている。「発散的であり、発展余地がつねにありうるものであるため、完成イメージとして確定的な姿をしていない。」という指摘の通りであり、それ以上を忖度する必要はなく、はいはい、知っているよ、ということであるように感じられる(本文にもちょうどオースティン批判のエピソードが見られる)。

マーケットの新常識「適応的市場仮説」の衝撃

訳者の記事だが、何が新常識で衝撃だったのかはわからない。理論としての意味を見出しているのか、実務上の成果に意味を見出しているのか。多分そのどちらでもないということのように感じられる。

コロナ後の進化とは~山崎元おすすめ図書: Adaptive Markets 適応的市場仮説から考察する~

著者がインデックス投資派?ということもあり、個人的にはイメージが近かった。「適応的市場仮説は、物事を理解する枠組みであって、枠組みだけを理解しても、何かが予想できるようになったり、投資でもうけられるようになったりするような「直接的なもうけの種」ではない。」その通りだと思う。しかも、なにか新しい枠組みであるというよりは、我々の素朴な認識の枠組み「うまくやれば出し抜いて儲けられるのではないか」を支持している。

市場万能説に代わる新理論AMHとは?

2010年の記事だが、こちらの方がわかりやすいかもしれない。「ローは市場の「生態系」を研究することこそ真実を見つける道だと考えている。生物学者が生物の種をリストアップして時系列でその盛衰を追うように、規制当局や行政は多岐にわたる市場参加者を分類すべきだという。」こういう研究が新たに必要であることは間違いない。「教訓とは、統合された大きなモデルを捨て去るべきだということだ。」こちらも書籍に書かれていたところでもある。誰もがそのモデルを利用するようになった時、そのモデルは価値がなくなる。適応的というのはそういうことではあろうと思う。

2021年1月14日木曜日

住宅ローンは、フルローン・35年・借入総額をできるだけ大きく、かなと。

何年か前に、賃貸がいいのか、それとも購入がいいのかという記事を書きました。基本路線は購入で、ただし条件は投資であることが大事かなと思っているわけでして、現状も変わりません。

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賃貸か持ち家か、答えは持ち家がレバレッジを効かせた投資か消費かによりそう
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2021年、新型コロナもなかなかおさまらない中、面白い記事を見つけました。とりあえず買う場合を想定していますが、思っていた考えとは逆の視点でした。住宅ローンはできるだけ小さく、短く、無理なくということで、しかもこの方が「貯まる人」だということです。どう考えたらいいだろうかと思った次第です。

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住宅ローンの組み方でわかる!貯まる人・貯まらない人
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確かに、自宅購入が「消費」であるのならば、安く買った方がいいと思います。一方で、自宅購入に投資的な意味を見出そうとするのならば、借金はできるだけした方がいいと思います。そして、お金が「貯まる人」は、消費タイプではなく、投資タイプです。それも、事業家タイプの本格的な投資ではなく(それはリスクが大きいので)、自宅ぐらいは投資で買ってもいいというぐらいの中庸なリスク許容タイプが該当します。

特に現状では、住宅ローンの金利は1%を大きく割り込み、一方で住宅ローン控除は1%を維持しています。利子はしばらくの間ノシをつけて戻ってきます。この時に、借りられるのに借りないという手は理解が難しいところです。

おそらく、自宅購入が消費か投資かという区分に関連して重要になるのは、フルローンをしたとして、手元に残ったお金をどうするのかということです(そもそも手元にお金がなければ、フルローンするしかないので、この場合はそんなに気にすることもないですが)。残ったお金を、万が一に備えてタンス預金したり、あるいは生活費の一部として消費して使ってしまうとすれば、ちょっともったいないところではあります。この場合には、あえて頭金として支払ってしまうことで手元の残高を減らし、消費行動が取れないように自らを縛るという手はありえます。

しかし、基本的に投資タイプの場合には、このようなタンス預金や消費してしまうという選択肢はあまりとらないのではないかと思います。すなわち、使わずに残ったお金は、それこそ投資資金となるということです。元来、借金はレバレッジをかけているわけでもあります。住宅を投資とみなすのみならず、その際に使わずに済んだ手元資金こそ投資することによって、真に投資が可能になります。

極端な話、手元に3000万円あるとして、3000万円の住宅を現金で買えば、不動産が3000万円となるだけです。右から左にお金が動いただけです(図左)。これに対して、3000万円あっても3000万円借りることで住宅を購入すれば、3000万円も手元に残り、一時的に資産は6000万円となります(図右)。

6000万円の資産のうち、借りた3000万円は、しばらくの間実質金利はゼロか、少し戻ってきさえします。さらに、残った3000万円を債権やあるいはETFなどに投資すれば、リスクは押さえながらもさらに利子を期待することができるようになります。仮にその利子が3%でもあれば、借金の年間返済額にほぼ充当することができます。

35年後にどうなるかというと、現金で不動産を買った場合には、不動産が残るだけですが、借金した場合には、不動産とともに、元手だった3000万円がほぼそのまま残る(そして利子を出し続ける)ことになるでしょう。万が一、低リスク金融商品が毀損していたとしても(もちろんこの選択肢は、ランダムウォークを信じる限り低確率ですが)、それは単に不動産だけが残った、ということになるだけです。どちらが得かは、ほぼ明らかのように思います。



結局のところ、お金が貯まる人かどうかは、住宅ローンの組み方で決まるのではなく、その前の段階、つまり、住宅の購入を消費とみなしているのか、それとも投資とみなしているのかによって先に決まっているように感じます。繰り返しですが、もっともお金が貯まるのは、住宅の購入を投資とみなしている場合です。そうではなく消費とみなしている場合には、次善の策として、借入総額を小さくし、すなわち手元に残すお金を小さくすることによって、消費行動が大きくなってしまわないように禁欲するという選択肢がでてくると考えられそうです。