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2020年5月9日土曜日

COVID-19のインデックス投資やパッシブ投資への影響

 COVID-19、新型コロナウイルス拡大の影響は極めて甚大であり、世界経済にこれまでにないほど大きな傷を残している。原油価格の問題もあり、今後どのような展開を見せるのかもよくわからないが、少なくとも5月に入り、これまでの状況を確認することができるようになっている。ちょうど前の更新が2年ぐらい前のランダム・ウォーカーの話だったので、これに関連づけて少し状況を整理しておく。

日経平均

ダウ平均

 株価を見た場合、日経平均は3月19日に16,358円、ダウ 平均は3月23日に18,213ドルまでザラ場で下落した。2月時点では、日経平均は24,000円台、ダウ平均は29,000ドル台まで上がっていたことを考えると、それぞれ、32%、37%程度の下落であり、3割から4割程度下げたことになる。

「コロナパニック売り」後の相場はどうなるのか
東洋経済ONLINE 2020年4月13日

特に印象深いのは、3月半ばの大きな下落であり、個人と言うよりは機関投資家のパニック売りや投げ売りが目立ったことである。リスクをオフしたという戦略的な理由もあろうが、一定損が生じた際にはロスカットするという極めて機械的なルールにのっとった結果であろう。この傾向が強くみられたのはJREITであり、3月19日一日で2割近く下落した。データを取り出せなかったが、一日の中でも終盤の1時間ぐらいの出来事だったように思う。

東証REIT指数

コロナ・ショックでもREITに強気な理由
日本経済新聞、2020年3月29日

こうなると、いよいよインデックス投資やパッシブ投資もどうしようもないようにみえるが、その影響にはいくつか違いがみられる。REIT指数のように大きく下げたものものあるが、思っているよりも下げないものもあるからである。

BND

VTI

上記はいずれもよく知られたETF投資の一つ、バンガードのBNDとVTIのグラフである。BNDは米国の投資適格債券全体を対象とし、VTIは米国の株式市場全体を対象としている。どちらもやはり大きく下落しており、特にVTIの場合には、ダウ平均と同様に、170ドルから110ドル程度にまで、35%程度下落している。だが、BNDは違う。90ドルから77ドルへの下落は、15%程度にとどまる。しかも、その後5月の段階において、VTIはいわゆる半値戻しだが、BNDはほぼ以前の水準に戻っている。一般的に、社債はリスクに強いとされるが、その傾向が今回もみられたということになるだろう。

もちろん、BNDの強さは、特に今回はFRBの介入も大きい。3月23日から始めていた社債の買入の範囲を広げ、4月にはジャンク債まで買い入れることを決めている。

ついにジャンク債まで購入するFRBの危機感
東洋経済ONLINE、2020年4月12日

興味深いことに、利回りという点では、このところBNDもVTIも2%程度であり変わらない(BNDの方が高い)。キャピタルゲインを期待しないのであれば、社債や国債を対象としたETFがリスクに強くて良いことになる。当たり前だが、キャピタルゲインを期待するということは、上がる分下がりうるのであり、ボラティリティが高くなる。それを望まないのならば、やはりインデックスやパッシブが重要になるとともに、社債や国債などに目を向けることになるのだろう。
(ただし、この選択はアメリカの話であり、日本市場において社債や国債を対象とすることは、利回りを期待できない以上あまり意味がないかもしれない。)