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2020年12月20日日曜日

COVID-19が作り出すアクティブ投資の芽?

 このところインデックス投資やパッシブ投資を評価してきたわけだが、一方で、そのカウンターの登場についても注意してきた。特に気にしていたのは、インデックス投資が主流となることで市場に何かしらの負荷を与え(例えば流動性が失われ、株価が引き上げられることで突然のショックの際の下がり幅が巨大になるなど)、意図せざる結果のようなものが引き起こされるのではないかということであった。この点については依然として状況がはっきりとはしていないが、少なくとも現状で目に見える問題とはなっていない。

それに対して、今回のCOVID-19騒動はアクティブ投資への芽を作り出しているかもしれない。面白い記事を見つけた。

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来年も株高は継続、利回り求める投資家マネーが流入=ニッセイAM社長

Reuters/TORU HANAI
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この記事では、2021年の株高が見込まれているが、ポイントはそこではない。インデックス投資やパッシブ投資に対する認識にある。COVID-19は特定の業種への大打撃と株高を引き起こしており、とはいえその特定は容易というわけである。

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「ここ数年はパッシブが効率的な運用だと言われてきたが、インデックスだとその『元に戻ることが難しい業態』が含まれてしまう。銘柄選別をしてアクティブで運用した方がパフォーマンスが良くなる。パッシブとアクティブのパフォーマンスに差が出て、パッシブ化の流れが止まり、向こう数年はアクティブの時代が来るのではないか。」

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近年では特定業種で括ったインデックスのようなものもあるから一概には言えないが、ここでみているのはVTのような全業種全世界型のインデックスである。従来であれば、どの業種がうまくいくのかはわからないのだから、全体に投資することが最適であった。しかしながら、その前提が崩れるのならば、特定の業種への投資や、アクティブの芽が出てきてもおかしくはない。

しかも、今述べたように特定業種で括ったインデックスもあるから、これらを利用することで、特定業種内でのばらつきにも対応することができる。結局のところ、不確実性が高まればVTが有効になるが、不確実性が下がれば下がるほど、すなわちどの株が上がり、どの株が下がるのかがわかるようになればなるほど、VTよりも個別銘柄への投資が有効になる。

重要なことは、あくまでそれは一時点だということであり、この状態がいつまで続くのかはわからない。われわれは、基本的にVT、あるいはせめて業種くくりのインデックスが有効であろう。

2020年6月6日土曜日

損切りしてはいけないと思う

COVID-19、新型コロナの問題は継続しているが、このところずっと思っていたことの一つに、損切りすることの是非がある。当然市場が右下がりになればショートでなければ損もでる。途中で見切って売り逃げることは重要かもしれない。しかし、100万円で買った株の株価が50万円になったところで、そのままであればあくまで含み損というだけである。いずれ100万円に戻る日があれば、損はなくなることになる。ところが、損切りする場合には、50万円の損が確定する。その是非である。

多くの書籍やサイトを見ると、損切りはした方がいいという前提で書かれているように思う。具体的にどのレベルで損切りするのか、明確にルールを持っていた方がいいという指摘もある。だが繰り返して言えば、その理由はよくわからない。3つぐらいありえるだろうか。

1。もっと下がる前に処理するため。

確かに、損切りせずに持っておくことで、もっと下がってもっと損するかもしれない。倒産でもした日には価値はゼロになってしまう。この問題は、特にレバレッジをかけている場合には大きいかもしれない。しかし、逆も然りである。損切りを推奨する場合には、どこかでまた上がるかもしれない、という楽観的希望こそが問題であるとされる。本当なのかどうかはわからない。ランダム・ウォーカーを前提とすれば、この後もっと下がるのか、それとも上がるのかは、通常は等しくわからない。

2。次にお金を回すため。

この指摘はよくわかる。50万円でも早く回収することで、もっと有望な案件にそのお金を回すことができる。下がる確率が高い株よりも、上がる確率が高い株に回した方がいいことは間違いない。だが、それがわかるかどうかはまた別の問題であろう。合わせて、もう一つ大きな問題として、そこまで資金に余裕がない状態というのはどうなのだろうか。有望な案件があれば、それはそれで投資しておいたらいいのではないか。そのぐらいの余裕資金を取り分けておいた方が安心感も増す。

3。損益通算の税金計算のため。

この指摘もよくわかる。損出しして買い戻せば、株そのものはもったまま、損を株式上は消すとともに、別の利益と相殺することで税金(通常は20%であろうか)を減らすことができる。ただ、この方法もいつも少し思うのは、税金の確定を後ろに繰り下げただけであり、損そのものは出てしまっているのだから、損切りそのものを強く肯定するわけでもないように感じる。

おそらく、こうした理由が混ざっているのだろう。だが、もしデイトレーダーのように生活をかけているわけでもないのならば、2番目のお金の利用効率はそこまで気にならないのではないか。余裕資金の中で動かしている限り、そこまで効率性を重視しなくてもいい。3番についても、損自体がなくなるわけではないとすれば、そこまで必死に考える必要もない。年末に少し調整すればいい程度である。

特に心理的に不安を作り出す要素であろう1番の問題は、もっと下がるかもしれないという発想そのものを無効にできるアイデアに乗っておけばよい。つまり、インデックス投資やパッシブ投資である。これらは損切りする必要が、投資会社が倒産したり撤退するリスクを横におけば、いよいよない。

2020年5月9日土曜日

COVID-19のインデックス投資やパッシブ投資への影響

 COVID-19、新型コロナウイルス拡大の影響は極めて甚大であり、世界経済にこれまでにないほど大きな傷を残している。原油価格の問題もあり、今後どのような展開を見せるのかもよくわからないが、少なくとも5月に入り、これまでの状況を確認することができるようになっている。ちょうど前の更新が2年ぐらい前のランダム・ウォーカーの話だったので、これに関連づけて少し状況を整理しておく。

日経平均

ダウ平均

 株価を見た場合、日経平均は3月19日に16,358円、ダウ 平均は3月23日に18,213ドルまでザラ場で下落した。2月時点では、日経平均は24,000円台、ダウ平均は29,000ドル台まで上がっていたことを考えると、それぞれ、32%、37%程度の下落であり、3割から4割程度下げたことになる。

「コロナパニック売り」後の相場はどうなるのか
東洋経済ONLINE 2020年4月13日

特に印象深いのは、3月半ばの大きな下落であり、個人と言うよりは機関投資家のパニック売りや投げ売りが目立ったことである。リスクをオフしたという戦略的な理由もあろうが、一定損が生じた際にはロスカットするという極めて機械的なルールにのっとった結果であろう。この傾向が強くみられたのはJREITであり、3月19日一日で2割近く下落した。データを取り出せなかったが、一日の中でも終盤の1時間ぐらいの出来事だったように思う。

東証REIT指数

コロナ・ショックでもREITに強気な理由
日本経済新聞、2020年3月29日

こうなると、いよいよインデックス投資やパッシブ投資もどうしようもないようにみえるが、その影響にはいくつか違いがみられる。REIT指数のように大きく下げたものものあるが、思っているよりも下げないものもあるからである。

BND

VTI

上記はいずれもよく知られたETF投資の一つ、バンガードのBNDとVTIのグラフである。BNDは米国の投資適格債券全体を対象とし、VTIは米国の株式市場全体を対象としている。どちらもやはり大きく下落しており、特にVTIの場合には、ダウ平均と同様に、170ドルから110ドル程度にまで、35%程度下落している。だが、BNDは違う。90ドルから77ドルへの下落は、15%程度にとどまる。しかも、その後5月の段階において、VTIはいわゆる半値戻しだが、BNDはほぼ以前の水準に戻っている。一般的に、社債はリスクに強いとされるが、その傾向が今回もみられたということになるだろう。

もちろん、BNDの強さは、特に今回はFRBの介入も大きい。3月23日から始めていた社債の買入の範囲を広げ、4月にはジャンク債まで買い入れることを決めている。

ついにジャンク債まで購入するFRBの危機感
東洋経済ONLINE、2020年4月12日

興味深いことに、利回りという点では、このところBNDもVTIも2%程度であり変わらない(BNDの方が高い)。キャピタルゲインを期待しないのであれば、社債や国債を対象としたETFがリスクに強くて良いことになる。当たり前だが、キャピタルゲインを期待するということは、上がる分下がりうるのであり、ボラティリティが高くなる。それを望まないのならば、やはりインデックスやパッシブが重要になるとともに、社債や国債などに目を向けることになるのだろう。
(ただし、この選択はアメリカの話であり、日本市場において社債や国債を対象とすることは、利回りを期待できない以上あまり意味がないかもしれない。)