2012年8月6日月曜日
異端の系譜
中西 茂『異端の系譜―慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (中公新書ラクレ)』、2010。
慶応大学の湘南藤沢キャンパス、通称SFCの歴史や学生、卒業生に焦点を当てた書籍である。記述の方向性はずいぶんと異なるが、大学評論ということで、以前紹介した三商大と比較しながら見ても面白いかもしれない。
SFCはまだ新しいキャンパスであるとともに、設立当時は特に、独特な学部として知られていた。本書でも紹介されているように、その評価はジェットコースターのように上り下がりを繰り返す。大学教育というものはそういうもののように感じるが、少なくとも現時点では、日本を代表する人々を育成してきたともいえる(育成という点は極めて難しい問題であり、大学が彼らを育成したのか、それとも、そもそもそういう人たちがこの大学を選んだのかはわからない)。
SFCの設立にあたり、いろいろな議論があったことがわかる。設立当時の大学の気風は往々にしてこういうものなのかもしれない。時間が経てば、それはやはり失われていくし、また変容していくのだろう。学生も入れ替わるし、教員も入れ替わるのだから当然と言えば当然である。
後半は、主だったSFC卒業生にフォーカスをしている。彼らがSFC生の多数派とは思えないが、こういった卒業生が何人もいるということは、SFCの一つの特徴には違いない。通常の大学とは異なる気風がある(あった?)のだろうと思われる。
本文では、学長の加藤寛氏がその後千葉商科や嘉悦大学へ移っていったという記述がある。SFCの運営のすべてを学長が持っていたわけではないだろうが、SFCの教育の効果をより正確に捉えようとするのならば、これら別の大学との比較が重要になりそうだ。