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2012年6月29日金曜日

勇気ってなんだろう

勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)
江川紹子『勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)』、2009

著者は、フリージャーナリストであり、テレビや週刊誌などで活発に活動されている。最近、オウム真理教事件の指名手配犯人が続けて逮捕された際には、著者のコメントが注目された。何しろ事件では、著者は、その取材を通じて教団から敵対視され、命まで狙われている。ホスゲンという毒ガスを、夜間にホースで家の中に流し込まれたのである。幸い発見が早く、流し込まれた量は少なくて命拾いした。

こうした経緯を思うと、著者が「勇気ってなんだろう」と考えたり、又、事件の体験から何か確信を手にしたことは十分ありそうだ。しかし、この本は、勇気に関しての自身の体験報告ではない。それぞれ無関係の6人の現代人等(一件は複数の人々)が取り上げられて、各人の体験や考え方を著者が取材し、それをルポタージュという形で紹介している。その人物名と、それぞれの話題をまとめると、以下の通りである。

1 野口健さん・・アルピニスト、エベレスト登山や富士山の清掃登山。
2 山本譲司さん・・元国会議員、政策秘書の名義借りで懲役刑。現在は障害者支援。
3 蓮池透さん・・拉致被害者の薫さんの兄。家族会の一員として活躍。
4 仙波敏郎さん・・愛媛県警の裏金問題を告発した現職警官。現在は定年退職。 
5 高遠菜穂子さん・・ボランティア活動中のイラクで、武装勢力に囚われる。
6 イスラエルの人々・・男女徴兵制のイスラエルで、兵役を拒否する人々。

この本は、中高校生など、若い人を対象としている。著者は、大人の一人として前書きで次のように書いている。「何をかくそう私も、しばしば不安になり、迷い、気後れし、後悔している大人の一人です。他の人たちの発言や行動を聞いたり見たりして、どうしてこんなに勇気があるんだろう、とか、この人の勇気を私も分けてもらいたい、と思ったりすることがよくあります。」と書いている。だから、その人たちの話を聞いてみることにしたのです、と。

命がけで取材してきたジャーナリストが、勇気を分けて貰いたいとまで賞賛する人物たち。彼らはどんな考えを持ち、とんな生き方をしているのか。多分、そうやって他の人の現実にまで想像を広げていくことが、何より勇気の発生源のような気がする。


それでも僕は現場に行く 獄窓記 (新潮文庫) 救世主の野望―オウム真理教を追って