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2012年6月25日月曜日

「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか

「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか (幻冬舎新書)
日本映画専門チャンネル『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか (幻冬舎新書)』、2010

今や日本を代表する映画(およびテレビドラマ)となった踊る大捜査線について、撮影関係者、映画関係者、更には有識者がそれぞれに筆を執った「踊る大捜査線」論である。興味深いことに、決して踊る大捜査線を褒め称える、あるいは成功理由をありきたりの枠組みで語るというだけではなく、批判的な側面からも議論が進められている。

一番批判的なのは脚本家/映画監督の荒井晴彦氏だろうか。冒頭からヒットの理由がさっぱりわからないとして、結局はフジテレビのプロモーションの力であったと分析している。なるほど、そうかもしれない。

この指摘は、実は本書を共通する視点でもある。肯定的な議論もまた、テレビの論理が映画へと進出したことを大きな成功要因だと考えているからである。続けて彼の言葉を借りれば、映画とテレビの間に確実にあった違いがなくなってしまった。それを憂うべきなのか、それとも良いことなのかが議論されているといえる。良いか悪いかは立場で違うが、本書を通じて、踊る大捜査線については共通の理解が生まれていることがわかる。

もうすぐ新作が公開される予定だが、その成否を越えて、もっと他に議論できる点を探すこともできる。歴史的な資料としての価値もあるだろう。10年後、20年後、当時の人々が何を考えたのか、改めて参照できる。

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