2012年7月24日火曜日
リッスン・ファースト!
スティーブン・ラパポート『リッスン・ファースト! ソーシャルリスニングの教科書』翔泳社、2012。
最近注目されるソーシャルメディアのマーケティング利用についての解説書である。ソーシャルメディア上にあふれる書き込みをいかにしてマーケティング利用につなげるのか、いろいろとわかりやすく説明されている。
答えを一言でいえば、ソーシャルメディアであろうが旧来のマーケティングリサーチであろうが、押さえるべき点は変わらない。アンケートを配るか、それとも、twitterやfacebookの情報を効率的に集めるかの方法の違いはあっても、大事なことは、集める前の理由と、集めた後の分析であろう。「リスニング」という言葉を、「リサーチ」に変えてもだいたい問題なさそうだ。
当然、集められる情報は異なる。ただ、ソーシャルメディアの方が価値がある情報を得られる、はずもない。ソーシャルメディアの方が本音の声が聞けるという素朴な話もあるが、そんなはずもない。消費者のインサイトを捉えるというのは、本書にもあるように、調べた側が抉り出すものなのであり、それは旧来のリサーチも今回の方法も同じだと思う。
読んでいてそういえばと思ったのは、共感を得るメッセージを開発するという下りだった。最も共感が得られるであろうメッセージは、相手の言葉をそのままおうむ返しすることである。共感も何も、自分の言葉であれば最初から納得的であろう。こうした言葉をうまく拾い上げる方法としては、ソーシャルメディアは使い勝手がいいかもしれない。旧来のリサーチでも可能だろうが、メッセージの形をたくさん集めるという意味では、コストからみてソーシャルメディアの方が簡単のように見える。