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2012年5月14日月曜日

さよなら!僕らのソニー

 
立石泰則『さよなら!僕らのソニー (文春新書)』、2011。 

この数年、エレクトロニクス産業の凋落が特に指摘されるようになっている。韓国や中国の新興企業、あるいはアップルに太刀打ちできなくなっているというわけだが、その最も象徴的な存在がソニーである。

ソニーの失墜については様々な考察が存在しているが、先の海外勢の存在を外的な要因だとすれば、一方で内的な要因もしばしば指摘される。すなわち、相対的な技術優位性が失われつつあること、その理由の一つとして、トップマネジメントの失敗に伴う組織運営に問題があったというわけである。

 本書は、後者の内的な要因に焦点を当てて議論が進められている。組織的な問題は、ひいては海外勢との競争にも影を落とすことは言うまでもないからである。興味深いのは、この考察に当たり、歴代のトップマネジメントについて比較的客観的な分析を加えている点であろう。この背景には、貴重なインタビューに基づく判断がある。

多くの場合、あの社長が悪かったのだ、という実に属人的なストーリーになるわけだが、社長一人が変わった程度で、これほどの大組織が急激に変わるはずもない。トップマネジメントは徐々に影響を及ぼすはずであるし、そもそも当の新しいトップは、多くの場合、既存の組織を作る為に貢献していたはずである。(急激に変わる組織があるとすれば、それは、戦略的な見せ方の問題であるように思われる。その見せ方が、現に組織変革の引き金となることも確かであるが。) 

トップマネジメントが悪かった、と後から言うことは容易い。だが、本書にみる通り、トップとて最初から会社をつぶそうとして行動するわけではない。行動の中でトップ自身が変容していくのであり、その変容も含めた行動の中で、組織はよくもなれば悪くもなる。トップの変容も含めた組織力学のあり方を学ぶことが大事なのであろう。