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2013年1月5日土曜日

みんなのベイトソン

みんなのベイトソン
野村直樹『みんなのベイトソン』金剛出版、2012

グレゴリー・ベイトソンの解説本だが、こった作りになった本である。会話風による解説は時々見かけるが、その解説をさらにサスペンス小説が挟み込んでいる。こうした構成そのものがベイトソンが示そうとした学習ということなのかもしれないし、禅の話も重要には違いないが、一方で読みにくいともいえる。

会話風の解説はわかりやすいところで、ベイトソンによる学習の論理について、試行錯誤が生じないルーチン化された学習0、特定の問題について試行錯誤で学んでいく学習Ⅰ、特定の問題の相対化までを試行錯誤で学んでいく学習Ⅱ、そして、自己を変更することまでを含み、もはや一言では説明できない状態として学習Ⅲが提示される。

大事なのは学習ⅡとⅢということになるだろうが、とにかくⅢが直接的には理解しにくい。自分が変わることであったり、学んだ内容について、自ら修正を施せるようになるようなこというようではある。理論を学んだ際、やがて、自らがその理論の体現者として、その理論を新たに作り直していくような学習であろうか。

学習Ⅲは、関係性にも関わるという。もともと、ベイトソンは学習をコミュニケーションとして捉えていたらしい。コミュニケーションは、基本的に相手を必要にすることになるから、ここでの学習とは、個が知識を得るというプロセスではなく、関係性の変化として理解されることになる。

この本を読んでちょっとベイトソンに気になったので、もう少し読んでみようと思う。このあたりから学習ⅡやⅢが始まるということなのかなとも思う。あるいは、読んだだけでは駄目で、もう一歩、コミュニケーションが始まるところまで進める必要があるということなのかもしれない。

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