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2012年12月23日日曜日

「お金の流れ」はこう変わった

「お金の流れ」はこう変わった! 松本大のお金の新法則
松本大『「お金の流れ」はこう変わった! 松本大のお金の新法則』ダイヤモンド社、2012

  投資説明会などに出席すると、こうした話を聞くことになるのであろうか。著者は、ネット証券であるマネックス証券の社長である。

 内容は、次の通り。
1章 今、世界の経済はどうなっているのか。
2章 みんなで動けば、株価は上がる!
3章 マーケットとのかかわり方 
4章 トレーディングの死線は「情報」にあり
5章 タフな市場で生き残るために必要なもの

 ざっと読めて、しかも面白く役に立った。まず、1章と2章の内容がこの本の中心で、そのままタイトルになっている。3章から5章までは、株式市場への招待と関わり方、そこでの心構え等である。言わば、1章と2章が理論編、3章以下が実践編か。

 まず、世界で起きている重要トレンドとして、欧米諸国に偏っていた富が逆流し始めたこと、今後は「情報×人口」という掛け算で経済が伸びていくことが指摘されている。このことに関連して、「歴史的なGDP分布推計値」という珍しい資料が示されて(丸紅経済研究所の資料らしい)、大変面白い。資料によれば、16世紀から19世紀前半までは中国・インドが世界のGDPの3分の2程度を占めている。ところが19世紀後半には産業革命を経て、アメリカ、イギリス、ドイツなどの伸びが目立つ。そして、1973年には、中国とインドを合わせても11%しかない。一方アメリカは31%、ソ連14%、日本11%、ドイツ9%などとなる。これが、今後逆転して、これから再び中国・インドなど人口が多い国が経済発展する、というのである。いわば、「人口ベース経済への回帰」だ。その背景には、情報技術の発達により、情報と技術がオープンに提供されたことが大きいという。

 又、お金やものの値段についての説明も興味深かった。著者は、ものの値段はその本源的価値とは無関係である、と言う。世界には1京円(10000兆円)のお金があるらしい。それらは、「比較的いい場所」を求めて動き続けるようだ。お金が向かうところの値段は上がり、お金が抜けていくところの値段は下がる。つまり、値段というのはそのものの本源的価値とは無関係で、その器に水がどれだけ流れ込んだか、という一時的な現象を表しているに過ぎないのだと言う。しかも、1京円(10000兆円)のうち、アメリカに4500兆円、日本に1500兆円もあるのだそうだ。これらは、いずれも日本の個人の常識とかなり異なるのではないか。

 著者は本文の冒頭で、自分は経済学者ではないし、経済学を勉強したことがない、と書いている。しかし、資本市場に長年身を投じてきた金融マンとして、お金や投資のことを考えていきたい、と言う。ところで現在、経済学者や専門家と言われる人たちの話が、両極に分かれているように見える。いわゆるアベノミクスを巡って、円安株高が、今後の展望であるか、それが単なる麻薬に過ぎないのか、議論は分かれている。日本の20年来のデフレの評価も、決して一様ではない。デフレの原因も、専門家の間で主張は分かれる。

 「あきらめずやり続ける。やりながら軌道修正をしていく」という方針で進んだら、と著者は最後の方で提案している。私は、著者の言う通り、柔軟な試行錯誤がいいと思う。


私の仕事術 (講談社+α文庫) 預けたお金が問題だった。-マネックス松本大が変えたかったこと こうすれば日本はよくなる!