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2013年5月30日木曜日

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方
奥出直人『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』早川書房、2007年

名前は何となく知っていたが、本として読んだのは初めてだった。前段はあまり面白くなかったが、第4章あたりから非常に興味深い内容になった(6章以降はやはりトーンダウンを感じる)。第4・5章は、イノベーションを生むための具体的なプラクティスを提示していると思う。

師匠-弟子モデルを軸としたコンテクスチュアル・インクワイアリーといったやり方が面白い。調査相手を師匠だと思い、その師匠がなす事を徹底して真似して内面化していく。確かに、通常のマーケティング・リサーチにおいて、顧客のことを「師匠」だと思うことはほとんどない。顧客至上主義などといいながら、そもそも調査すらできていなかったわけである。

build to thinkのプロトタイピング思考もよくわかる。つくりながらでしか、考えることはできない。文章にしても、実際に書いてみないことには、何が書けるのかはわからない。これは、現実が思考実験の抽象度と決定的に異なる次元にあるからだろう。面積を持たない「点」は、しかし現実には面積や体積を持ってしか成立しない。

こうした手法は、本書で述べられているようにエスノメソドロジーやエスノグラフィーに重なるところがあるのだと思う。それゆえ個人的には、「この手法は哲学的には複雑な思考回路を要求するが、実践するとなると非常に簡単である(115頁)」というその間をもう少し詰めたい気もする。他のものも読んでみよう。

デザイン思考と経営戦略 『デザイン言語』―感覚と論理を結ぶ思考法 思考のエンジン