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2012年12月14日金曜日

新しい市場の作り方

新しい市場の作り方―明日のための「余談の多い」経営学
三宅秀道『新しい市場の作り方―明日のための「余談の多い」経営学』東洋経済新報社、2012

とても読みやすく、納得的な内容だった。東大ものづくり系からこの手の本が出るというのも興味深い。第4章のタイトルは「独自技術なんていらない」であるし、後段の信長が「茶器」の価値を創出したというくだりなどは、まさにニヤリとしてしまう(歴史好きだからではなく、ものづくりという話が、もともと性格的にあっていないからだが)。

個人的には、第3章の「「問題」そのものを開発する」というアイデア、およびそれに付随して「正しさを探しに行くな」という話が特に興味深かった。良い一節だと思ったので、たまには引用しておこうかと思う。

「私たちは問題そのものは発見の対象で、それを解決する手段こそが発明の対象と思ってしまっていることがままあります。しかし、それは錯覚なのです。実は、それを問題と思う意識自体が人間による発明なのです(87頁)。」

発見と発明の違いがよくわからない感もあるが、大事なのはそれを問題だと思う意識だということであろう。だからこそ、問題にせよ答えにせよ、外部に探しに行っても仕方がない。それは、それが問題だと感じた時点で、自分の中で最初から生まれているとしかいいようがない。

実際読んでいけばわかるが、おそらくものづくりそのものが否定されているわけではない。ものの価値こそが第一だと思う思考が否定されているのである。むしろ、ものであろうと何であろうと、「つく上げよう」という過程そのものは重要な点として残されている。


日本のもの造り哲学恋愛と贅沢と資本主義 (講談社学術文庫)戦争と資本主義 (講談社学術文庫)