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2012年8月20日月曜日

仕事するのにオフィスはいらない-ノマドワーキングのすすめ

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
佐々木俊尚『仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)』、2009

 週に一度、ある曜日を「どこでもオフィス」という日にして、その日は会社に出社せず、どこで仕事をしてもよい、としている会社があるそうだ。勿論、出社してもよいが、家でもどこでも、仕事を進めればよい。これは、ネット環境が整備されて、必ずしもオフィスに居なくても仕事が出来る時代になったことが背景にある。

 この本では、そうした仕事スタイルを「ノマドワーキング」として紹介すると共に、今後更に広がると予測している。「ノマド」とは、本来は砂漠の遊牧民のこと。フランスの思想家のドゥルーズとガタリが、1970年代に新しい人間の生き方として提唱(個々人が会社に頼らず、自分の意志と裁量でさまざまな人とつながって仕事をこなすイメージらしい)、そして2007年になって、イギリスの経済誌「エコノミスト」が「ついにやってきたノマド時代」という特集を掲載した。ネットで調べると、日本では2009年にこの本が刊行された後、新しいワークスタイルということで、ある程度話題になっているようだ。

 著者によれば、「ノマドワーキング」を実践する人たちとは、「個人としての矜恃を持ち、自宅やカフェや外出先などで、テレワーク的な仕事をこなす独立独歩な人たち」、「能動的に行動し、何のために仕事をしているかという価値観をしっかり持って、新たなワークスタイルを実践している人たち」であるという。核心は、セルフコントロールが出来る人たちということのようだ。そして、このコントロールのためのノウハウの紹介が、本の中心になっている。

 如何にして注意を持続集中して、仕事を上手に進めるか、どのように大量の情報をコントロールするか、又、個人で行動しつつ、どうやって人と共同作業をするか、それらを、著者は丁寧に解説している。BGMで作業のリズムを作る方法とか、どこで作業を中断するとよいかとか、情報のアクセスの工夫とか、細かな知恵がこの本にはぎっしり詰まっている。ITスキルは不可欠として、クラウドやグーグルサイト、スカイプの利用など、多くのツールが紹介されている。私は、グーグルサイトやクラウドをもっと使おうと思ったし、蔵書管理の方法など興味津々だった。

 ノマドにしろ会社勤務にしろ、セルフコントロールが今後ますます重要になることは確実だ。そして、何より著者自身がセルフコントロールの出来る人なのだ。この本には、著者の現在の仕事量が書かれていて、正直、感動する。伝授されたノウハウを、役立てたい。 

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