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2012年7月12日木曜日

われらゲームの世代17

亀を倒す

とはいえさすがは大人である。やがて、両親は画面の右上に変な数字があり(スコアである)、マリオとルイージで値が違うことに気づいた。どうしてスコアに変化がつくのかという話になった。それから、とにかく逃げ回っているうちに、偶然にも、亀にこちらがやられてしまうのではなく、亀をやっつけられる瞬間があることに気づいた。偶然亀にぶつかってしまったときに、なぜかマリオがやられるのではなく、亀がやられる時があったのである。

この亀はやっつけられるのかもしれない。というか、やっつけるというゲームなのかもしれない。みんなでそのための方法が模索され、どういうプロセスを経たかは覚えていないが、間もなく、床の下からマリオが亀の乗っている床をタイミングよく突き上げることによって、亀の動きが一旦停止することがわかった。そして、その停止している状態のときに、亀にタックルすると、亀の方がやられるのだ。

こうして亀たちは一匹づつ片付けられていった。最後の一匹になると、その亀は紫色になって凶暴になる。動くスピードは亀とは思えないぐらい速くなり、マリオたちに襲いかかる。これをやっつけるのは一苦労だった。それでも、なんとかその紫亀をやっつけた時、ついに、次のステージに進めることができるのだった。ちなみに、クリアの仕方がわかっていなかったときは、時間切れによって亀がいつも紫色になり、確実にやられるというのがパターンだった。

だんだんとステージを進めるようになり、ボーナスステージがあることや、それから亀だけではなく、他にもいろいろな敵キャラが登場することがわかってきた。蛾のようなキャラもいて、へんてこな動きをしてマリオを苦しめた。それでも、やり方さえわかれば作業は同じである。 だんだんと僕は上達していった。同時に、このゲームはいつ終わるのだろうと思うようにもなった。たしか、マリオブラザーズは、ある程度までいくと、後は延々と似たようなステージが繰り返される。無限ループともいうべき状況である。

あの頃を思い出してみると、リセットすればやり直せると思ったことは当然ないはずだ。逃げ続けるというおわりないゲーム、あるいは、延々とループし続けるゲーム、リセットをするということは、何のことはない、単にゲームを切り上げて現実世界に戻るというだけの話だった。そして、戻った現実もまた、考えてみれば、おわりなき日常である。リセットすればやり直せるようなものではそもそもない。それは、何よりもマリオブラザーズのゲームと同じだったのではないだろうか。亀にぶつかるまでは(まあ、死んでもやりなおせるのは確かだが)。

 ルイージ (S)心をリセットしたいときに読む本 (ぶんか社文庫) 終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル