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2012年6月13日水曜日

1Q84

1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)
  村上春樹『1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)』、2012

小説を書評することは容易ではない。一つにはネタバレの問題があるからであり、もう一つ、小説はそもそも書評されるべきものではないからだと思う。

こうした問題をわかった上で、一言だけ、感想を今回は書いておきたい。最初に読んでの感想は、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の現代版であった。いうまでもなく、世界の終わりーでは、主人公の外界と内界のような2つの世界が描かれ、主人公を中心として、2つの世界が交錯する。主人公の最終的な意思決定に対して、賛否の声があったように記憶している。

これに対して、1Q84では、さらに複雑に複数の世界が重ね合わされている。1984と1Q84、主人公とヒロイン、現実と小説、その他にもきっとあるだろう。こうした重ね合わせは、可能世界の積極的な導入によって可能になっているようだ。もし、と問い、なぜ、と問えば問うだけ、新しい世界が可能的に生じていく。

どうするとこういう小説が書けるようになるのかわからない。小説として引き込まれる感覚、書評したくなる感覚、没入感と超越感を同時に提供されているように感じる。きっと高度な技術が必要なのだろうと思う。作家であろうとするときに何をすれば良いのか、示唆は多い。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 新装版 (新潮文庫 む 5-4) 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) 神話が考える ネットワーク社会の文化論