no image
セオドア・レビット 土岐坤訳『マーケティング発想法』ダイヤモンド社、1971。
マーケティング界で1,2を争う著名人の一人、セオドア・レビットによるもはや古典ですな。あまりに有名すぎて、逆に読んだことがなかったわけですが、、、これはさすがに面白い。70年の段階でここまでいわれていると、その後、30年間何をやっていたのだろうと、ちょっと思ったり、思わなかったり。
レビットといえばマーケティング近視眼なんかが特に有名なわけですが、特にこの本を読んで感じたのは、もう少し全体的な、彼の社会科学的なセンスの良さ。経営本にありがちな、こうすればうまくいく、なんていう論理はまったくない。むしろ逆に、そういう論理こそが経営にとっては致命的となることが強調されているように思います。基本的に、社会ってのは塞翁が馬なわけで、これとうまく向き合う術が大事なわけです。さらにその一方で、しかしその術に関する論理はちりばめられているので、比較的読み手にとっても読みやすい。
各章ごとに面白かったのだけれど、特に「企業をすべてマーケティング・コンセプトでみたしてはならない」なんてのは大事なところかなと。マーケティングがあればすべてうまくいく、なんてことは当然ないわけで、そのあたり、どう折り合いをつけていくのか、これこそあるいは、マーケティングの発想なんだろうと思いました。
(初掲載2005.06.13)
追記
後にレビットの論文集は日本語書籍にもまとめられた。マーケティング近視眼はこちらに所収されている。