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2012年5月12日土曜日

三商大 東京・大阪・神戸


橘木俊詔『三商大 東京・大阪・神戸――日本のビジネス教育の源流』岩波書店、2012

歴史的記述でもあり、経営学を再確認する上でも興味深い一冊である。本書では、我が国の明治以降の商業を担う人材を輩出してきた三商大に焦点を当て、その歴史的な展開を考察している。

中心を担うのは、東京=一橋大学である。一橋大学が現在の地位を獲得するまでの経緯が語られる。大阪=大阪市立大学、神戸=神戸大学についての記述は相対的に少ないが、これらの大学の歴史的記述も行われ、さらには三商高大についても考察が行われている。

本書を読んで最初に連想するのは、ミンツバーグによる『MBAが会社を滅ぼす』であった。実際、後半には海外のビジネススクールが議論されている(どうしてその章の写真がマイケル・ポーターなのかはよくわからない。もっと前に焦点を当てるキーパーソンはいたように思われる)。

我が国のビジネス教育がいかにして展開してきたのかを問うことは、教育がこれからどうあるべきかという問いに答えるための材料を提供することはもちろん、今日的な日本経済のあり方についても一石を投じるものとなろう。教育の重要性も再確認できるように思われる。

本書は全体的に平易な内容であり、想定される読者層は広いように思われる。各大学の卒業生はもちろん、ビジネスのあり方についての理解を深めることもできる。なぜか、橋下市長に対する評価なども語られている。一般読者層を想定しているのか、それとも、歴史に関わる研究者を想定しているのかをわかりにくくしている印象もあるが、現実は区分不可能な中で進んでいくということであろう。