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2012年5月7日月曜日

商業・まちづくり 口辞苑


石原武政『商業・まちづくり 口辞苑』碩学舎、2012年

新しい本を紹介したい。
ショッピングセンターやアウトレットの隆盛に比べ、シャッター通りのように衰退激しい印象を持たれがちな商店街の数々。国の政策という点で言えば、こうした「まち」の復興が重要だと考えられてきた。だが実際には、そう簡単にことは運ばない。

本書では、こうした苦労の多い「まち」や商店街に焦点を当て、キーワードの説明が行われている。いずれも日常的に聞くキーワードの数々だが、本書の売りは、そのキーワードのすべてについて、表の意味と裏の意味がある、という点にある。どんなキーワードも、表向きの意味と、実際にそのキーワードが意味しがちなもう一つの意味があるというわけである。

考えてみれば、「まちづくり」というキーワード自体が、裏と表のある言葉に違いない。
表向きは、まちづくりと言えば誰も反対のしない、社会的に求められ、国の支援のもとにある活動に違いない。
だが、実際にまちづくりに携わるのならば、
その問題の大きさや、
「まちづくり」をとりまく様々な利害関係者の存在が見えてくるだろう。

二つの意味を理解してこそ、現実は動く。
表の意味を正当性のよりどころとして、裏の形で実際には現実を動かしていくのである。
そんなきれいごとばかり言って、
といったどこかでよく聞く批判は、
一方で正しいが、ことの一面でしかない。
それは正当性の担保であり、資源なのだといえる。